暴力行為にめげるな!駒苫ナイン
2005年8月23日 アマチュア(高校・大学・社会人)大人たちの不祥事で生徒の功績にまで泥を塗るな。
「高校野球の選手にとって3年間は短く、彼らはすでに明日を夢見ている。早く切り替える必要がある。(不祥事を)ひきずってはいけない」。駒大苫小牧野球部を支える父母会「深紅の会」の梶川昇会長はこう訴えた。
全国高等野球選手権大会で57年ぶり史上6校目の連覇を果した駒苫ナイン。偉業の達成をたたえる道内での駒苫フィーバーが続く中、野球部長の部員に対する暴力という衝撃的なニュースが駆け巡った。周知の通り、同校野球部の茶木圭介部長が6月と8月の2回にわたり、3年生の部員に暴力をふるったことが明らかになったためだ。
学校側が暴力事件の連絡を受けたのは8月8日。甲子園開幕3日目のことだ。
暴力をふるわれた部員の母親が直接学校に連絡。篠原勝昌校長はじめ幹部の知るところとなった。
篠原校長は、22日午後10時から同校で緊急会見を開き、暴力行為があったことを認め、茶木部長を謹慎処分にしたことを発表。同時に、優勝旗の返還も含め、いかなる処分も受け入れるとの見解を示した。
23日に予定されていた札幌市と苫小牧市での優勝報告会は中止となり、祝勝ムードは一転。テレビニュースや新聞報道でこの事実を知り、驚愕した人も多いはずだ。
篠原校長以下、学校幹部が暴力事件を知りながら、高野連に報告せずにいた事実は、報道で明らかなように隠してはならないものだった。
また、茶木部長、香田誉士史監督は高野連が下す裁きを真摯に受け止め、指導者として猛省する必要がある。
しかし、一連の報道は、今回の不祥事が連覇の偉業さえも否定するかのような内容に思えてならない。
「昨夏の優勝校」や「連覇達成を目指して」など、過度の期待と重責を背負って甲子園に向かい、連覇という輝かしい歴史を刻んだのは、紛れもなく野球部員である。
梶川会長も「連覇はみんなの心に残った偉業。今回のことでその結果が身にならないのでは選手たちがあまりにもかわいそう。やっとの思いで頂点に立った甲斐がない。学校関係者はもちろん、みんなが大人の考えでこの問題と向き合い、子どもたちが傷つかない方法を懸命に考えるべき」と強調する。
続けて「香田監督もそうだが、茶木部長は熱血漢。それだけに、こういう事態に陥らないように『選手を叩いたり暴力は絶対ふるうなよ』としつこく言ってきていた。自分たち『深紅の会』はさまざまな面から野球部を支える組織として機能する必要があるし、そのつもりで取り組んできた。今回の件で会長職の辞退も考えた。しかし、非常に痛い勉強ではあるが、指導者の考え方や指導体制など、さまざまな面で再出発を図るための機会としなくてはならない。茶木部長、香田監督は裁きをきっちり受け、責任を取るべき」と胸中を吐露した。
学校と保護者の関係は、一種危うい関係に陥っている。
暴力行為は当然許されるべきことではないが、札幌市内のある私立高校の教師はこう落胆する。「『時代が変わった』。そう思うほかないのが現在の教育現場の実状だ。今回の件は部活動の指導者が暴力をふるったという不祥事で、学校長が隠蔽してしまったことを含めて責められるのは当然。ただ、過保護すぎる保護者も多いのではないかと思う。というのも、保護者から学校に寄せられる苦情件数はここ数年で急増している。10年、20年前には考えられなかったような内容でも、親御さんが必死に訴えてくるのが実状。当然、教師が悪い場合もあるが、厳しいことを言うだけで苦情が寄せられていては、先生たちも萎縮してしまう。熱意を持って生徒と向き合おうという気持ちがあっても、保護者からの文句を恐れて行動できない教師が少なくないはずだ」。
暴力をふるった茶木部長の行動を正当化するつもりはない。事実関係は今後、学校と高野連の調査で明かにされ、しかるべきペナルティーが下されるだろう。学校側はそれを真摯に受け止めるべきだ。
しかし、思い出していただきたい。自分たちが学生だったころのことを。部活動で先生や先輩から厳しい指導を受けたとしても、自分が悪ければ素直に非を認め、今度は褒めてもらおうと一生懸命頑張った経験はないだろうか。事実関係が正確に分らない以上、無責任なことは言えないが、部員が暴力事件を起したり、喫煙が発覚したならばまだしも、今回の件で責められるべきは、茶木部長の暴力と事実を隠していた学校であり、優勝を勝ち取った部員たちではない。
駒苫の選手たちが教えてくれた諦めないことの大切さや感動に泥を塗ったのは大人たちである。
連覇という偉業は歴史の1ページに間違いなく刻まれた輝かしいものだ。だからこそ、選手たちには、下を向かず胸を張ってもらいたい。
http://www.bnn-s.com/bnn/bnnMain?news_genre=17&news_cd=H20021022757#
(リンクで飛べないのでアドレスコピペで飛んで下さい。)
仮に優勝が取り消されても、実力で頂点までのし上がっていった事実は消えないし、決勝中継を見ていた全国の人の記憶がそれを証明してくれるはず、と私は思いたい。
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